学校前の公園のニセアカシアに営巣したカラス家族。
学習能力の高い彼らは、木の枝と、マンションのベランダあたりからかっぱらったハンガーでハイブリッド家屋を作りやがった。
清掃奉仕
4月にようやく完成し、5月にゃ3羽のヒナが生まれ、教室からの楽しみにもなった。
子が生まれりゃあ親としても警戒心が高まるのが命あるものの常識。
そりゃあ俺もちょっとヒヤッとしたが、都会に住む俺が野性に迂闊だった。
count log 84,000(カラスとカモメと飛行船)
「ヒトに危害を加える前に!」
「こいつらをたたいてしまえ!」
巣から落ちたヒナはゴミ同然。
「俺たちが一体なにをしたというのだ!」
住むところを追われ、仕方なく行き着いた先のさらなる仕打ちか…。
ハイブリッドな巣と、3羽のヒナは、「ヒトのエゴ」という名の袋の中へ。
せめて、ヒトのヒナがこの様子をまぶたに焼き付けたことは救いか。
鹿も熊も狐も猿も、すでに住みかを追われ、仕方なくヒトの巣に降りる。
知恵を絞り、ヒトとの共存を歩もうとするカラスにすらも未来はない。
そんな、人の心を忘れたヒトに未来はあるか。
悲しみと怒りと憎しみの嗚咽とも聞こえる泣き声は、ヒトの巣であるマンション街にずっとずっと響き、教室に届く。